【AIと音楽①】加速度的に進化を遂げるAIと数学的システムから見る音楽制作の現場

システム開発チームのSasamiです。

目次

音楽系AIの進化

近年急速な進化を遂げているAI技術。以前、『Midjourney』という画像生成AIに関するブログを書きました。そのブログの中で、「ついに芸術の分野にも足を踏み入れたAI」と表現しましたが、それは音楽業界においても例外ではありません。

音楽も今やデジタルで完結してしまうのが主流になりつつあります。DAW(音楽制作ツール)の登場によりPC内で楽曲制作(DTM)を行なえる環境は急激に進化しました。このおかげで音楽がより身近なものになったとともに、制作における表現技法が大幅に広がりました。かくいう私もここに勤める前はクリエイターとして音楽業界に片足を突っ込んでいました。

DAWにおいては、数年前からすでに音声の自動解析や音声合成システム、AIによるミックスやマスタリング支援機能などは存在しており、私もその一部を活用していました。

そこから第3次AIブームの到来により、現在ではAIシンガーや自動作曲AIが生まれ、その技術は年々跳ね上がってきています。

最近では有名EDMプロデューサーがラッパーのエミネムの声をAI生成した楽曲『Emin-AI-em』の紹介動画をSNS上に公開したり、昨年は中国のTencent Music Entertainment(TME)が制作したAIシンガーによる楽曲のストリーミング再生数が1億回を突破したことも報じられています。

このようにAIが織りなす音楽が、昨今、大きな注目を集めています。

音楽とAIとの親和性

「そもそもAIが音楽?音楽ってその人のセンスや感性によって作り出されるものじゃないの?」

誤解を恐れずに言うと、音楽は非常に数学的なシステムの上に成り立っていると私は思っています。

普段よく耳にするいわゆるポピュラー音楽は、一定の法則や規則のもとに組み立てられています。それをわかりやすく昇華したのが音楽理論です。

音楽理論と聞いて、なんとなく想像されるのは重厚なクラシック音楽でしょうか。現代の人間がビビッとくるフレーズやコード進行も、古典クラシックの理論だと禁則に当たる可能性がありました。禁則とは使ってはいけない進行や展開のことです。

そこから時代は進み、「理論より感覚」が強く表れたのがロックです。ビートルズを筆頭に当時の常識を無視した新たな可能性を生み出しました。またアメリカ、ニューオリンズでは独自のルーツでジャズが生まれ、さらに別の箇所で新たなジャンルが生まれ、そこからまた派生して…、巡り巡って今の素晴らしい音楽があるのです。

何が言いたいかというと、上記の音楽も現在ではクラシック理論・ポピュラー音楽理論・ジャズ理論等に着地しています。つまり人間に受け入れられた音楽には「答え」があるということで、ひいては数学的なシステムがあると思うのです。当時の人間は考えていないとしてもです。

例えば工事現場の轟音に哀愁や趣は感じませんよね。それは数学的ではないからです。いや、まぁ現代音楽はそういった規則をさらにぶち壊しているので、こう断言するのはかなり乱暴な気もしますが。。。

しかし、こういった数学的なシステムはAIの得意分野ではないでしょうか。もちろんそのシステムに則ったからイイ曲が生まれるかはまた別の話で、そこにセンスや感性は必要だと思います。

私が開発チームの一員としてプログラミングに従事出来ているのは、もともとそういった作曲における緻密な計算をするのが好きだったからなのではと思っています。多少なりともどちらも経験している身としては、やはり音楽(作曲)とITは意外にも親和性が高い気がします。

新たなDTM時代の幕開けか「WavTool」

ここで最近発表された「WavTool」というブラウザDAWサービスが興味深かったのでご紹介させてください。

先にも書いた通り、DAWにおけるAI支援ツールはこれまでもたびたび登場していました。が、これは今流行りのChatGPTにも搭載されている、OpenAIの大規模言語モデル「GPT-4」を採用した新たな音楽制作ツールです。なんとテキストベースでAIに指示を出しながら音楽を作ることが出来るのです。

なんだかすごい時代がきましたね。

ChatGPTはあくまでテキスト生成に特化したAIで音楽生成に関しては得意としていません。しかし、WavToolには独自のAIチャットボット「Conductor」が組み込まれています。Conductorは音楽理論や音楽制作の方法を熟知したAIで、ユーザーとの対話でDAWにおける各種設定や生成まで行なってくれるそうです。

DAWっていろいろ複雑で、実は作曲と音楽制作は別物なんです。例えアナログで曲を書けたからといって、それをDAWを使った音源作品としてちゃんと形にするには、また別の知識が必要になってきます。そういった部分をこのConductorが補ってくれるというわけで、正に音楽制作の『指揮者』ですね。

こういったツールは音楽制作の知識が「ない」人よりも、実は「ある」人にとって有用な気がしています。すべての作業を一任するわけではなく、的確な指示でAIと作業を割り振ることで、本当に時間をかけたい箇所に自身のリソースを割くことが出来るためです。

このサービスは無料版もあるので、興味がある方はぜひ試してみてください。


数学的なシステムにより生み出されるAI音楽―――。
これぞ正に新時代の到来といった感じで、AIが音楽にもたらす影響には非常に関心があります。

次回はそんな「影響」の部分についても語らせてください。
というわけで、次回に続きます!

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この記事を書いた人

Sasamiです。音楽活動の傍らアルバイトとして入社したのが始まりでした。しばらく会社を離れていましたが、この度開発チームの一員として舞い戻ってきました。好物はお酒とギターです。

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